【第29回】実数の和



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ゆったり楽しむ高等数学
【第29回】実数の和

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【趣旨】
数学の楽しみ方には二つ(もっと?)あると思います。
一つは今ある知識を使って難問を解く楽しみ。
もう一つは数学の美しい理論体系を知る楽しみ。

このメルマガでは後者を読者として想定し、だいたい月一回の
ペースで高等数学の基礎的な問題を出題します。

※初めてこのメルマガを読まれる方は、
http://phys.co-suite.jp/melmag.html
にも目を通していただけると、よりお楽しみいただけます。
このメルマガの意義と読み方を簡単に説明しています。

==== 数式表示について ====
このメルマガでは数式はLatexの表記法を使用しています。
かなり読みにくいと思いますので、
http://phys.co-suite.jp/melmag/029.html
でも、同じ内容を掲載していますので、ご覧ください(表示に少し時間がかかります)。
また、上記ページが正しく表示されないという方は、PDF化した
http://phys.co-suite.jp/melmag/029.pdf
の方をご覧ください。


■前回の問題と解答例■

[問] 実数を、有理数のコーシー列を用いた構成で定義する。すなわち、任意の有理数のコーシー列の収束先の集合として実数の集合を定義する。

(例)$\sqrt{2}$ を与える有理数のコーシー列の例として \[ 1, 1.4, 1.41, 1.414, \ldots \] がある。
ところで一つの実数を定義する、有理数のコーシー列は一意的でないことに注意しよう。

さて $\alpha$ と $\beta$ を実数とする。定義よりある有理数のコーシー列 $\{a_n\},\{b_n\}$ が存在し、$\lim_{n\to \infty}a_n=\alpha,\lim_{n\to \infty}b_n=\beta$ が成り立つ。二つの実数の和 $\alpha+\beta$ を $\{a_n+b_n\}$ の極限値として定義する。このとき、$\alpha+\beta$ はそれを与えるコーシー列の選び方によらないことを証明せよ。

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[解] コーシー列 $\{a_n\},\{a'_n\},\{b_n\},\{b'_n\}$ が $\alpha=\lim_{n\to \infty}a_n=\lim_{n\to \infty}a'_n,\beta=\lim_{n\to \infty}b_n=\lim_{n\to \infty}b'_n$ を満たすとする。示したいのは $\lim_{n\to \infty} a_n + b_n = \lim_{n\to \infty} a'_n + b'_n$ である。任意の $\epsilon>0$ をとる。仮定よりある $N$ が存在して、任意の $n>N$ に対し $|a_n-\alpha|<\epsilon, |a'_n-\alpha|<\epsilon,|b_n-\beta|<\epsilon,|b'_n-\beta|<\epsilon$ が成り立つ。すると \[ |a_n-a'_n| = |a_n -\alpha + \alpha -a'_n| < |a_n -\alpha|+ |\alpha -a'_n| < 2\epsilon \] および $|b_n-b'_n| < 2\epsilon$ が成り立つ。$\alpha+\beta$ を $\lim_{n\to \infty} a_n+b_n$ の方で定義し、$\alpha+\beta=\lim_{n\to \infty} a'_n+b'_n$ を示すこととする。ここで必要に応じて $N$ を取り直して、$|(\alpha+\beta)-(a_n+b_n)|< \epsilon$ が成り立つようにする。すると \begin{eqnarray*} |(\alpha+\beta)-(a'_n+b'_n)| &=& |(\alpha+\beta)-(a_n+b_n)+(a_n+b_n)-(a'_n+b'_n)| \\ & < & |(\alpha+\beta)-(a_n+b_n) | + |a_n-a'_n| + |b_n-b'_n| < 5\epsilon \end{eqnarray*} が成り立ち、題意が示せた。

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■問題■

[問] フェルマーの原理によれば、光は、任意の固定された二点 $P_1$, $P_2$ 間を結ぶあらゆる経路のうち、光路長が最短の経路を進む。光路長は媒質の屈折率を $n$ とすると $dl=nds$ で与えられる。ただし $ds$ は物理的な微小距離、$dl$ は微小光路長。$P_1,P_2$ 間を結ぶ経路 $C$ を通過するときの全光路長 $L[C]$ は \[ L[C] = \int_{P_1\;C}^{P_2} nds \] である(積分記号の脇にある $C$ は経路 $C$ に沿っての線積分であることを意味する)。$n$ は一般に座標の関数である。フェルマーの原理から光の軌道を表す微分方程式を導け。

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■後記■

最近ハマっているテレビ番組があります。「137億年の物語」です。

私はもともと歴史が好きで、小学6年生のころは将来歴史学者になるぞと子供ながらに決心しておりました。
今となっては、中学校で習った歴史の知識プラス大河ドラマなどの歴史物番組で仕入れた知識しかありませんが。

この番組は人類歴史だけでなく、恐竜など地球の歴史も含めて解説しているので、とても楽しみにしています。

今は毎週土曜日6時からやっており、ちょうど夕食時に重なっていて、たぶん家内としてはテレビに集中するんじゃなくて料理の味に注目してくれと思っているのではと思います。

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