【第11回】コーシーの積分定理



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ゆったり楽しむ高等数学
【第11回】コーシーの積分定理

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【趣旨】
数学の楽しみ方には二つ(もっと?)あると思います。
一つは今ある知識を使って難問を解く楽しみ。
もう一つは数学の美しい理論体系を知る楽しみ。

このメルマガでは後者を読者として想定し、だいたい月一回の
ペースで高等数学の基礎的な問題を出題します。

※初めてこのメルマガを読まれる方は、
http://phys.co-suite.jp/melmag.html
にも目を通していただけると、よりお楽しみいただけます。
このメルマガの意義と読み方を簡単に説明しています。

==== 数式表示について ====
このメルマガでは数式はLatexの表記法を使用しています。
かなり読みにくいと思いますので、
http://phys.co-suite.jp/melmag/011.html
でも、同じ内容を掲載していますので、ご覧ください(表示に少し時間がかかります)。
また、上記ページが正しく表示されないという方は、PDF化した
http://phys.co-suite.jp/melmag/011.pdf
の方をご覧ください。


■前回の問題と解答例■

[問] 複素平面上の領域 $D$ とその境界 $\partial D$ で、(正則とは限らない)複素関数 $f(z)=u(x,y)+iv(x,y)$ が定義されている。ただし $z=x+iy$ で、$u(x,y),v(x,y)$ は実関数とする。$u,v$ は微分可能とするとき、 \[ \oint_{\partial D} f(z)dz = 2i \int_D \frac{\partial f}{\partial \bar{z}} dxdy \] を証明せよ。ただし、グリーンの公式 \[ \oint_{\partial D} (Adx + Bdy) = \int_D \left( -\frac{\partial A}{\partial y}+\frac{\partial B}{\partial x} \right) dxdy \] を使ってもよい。
特に $f(z)$ が上記定義域で正則ならば、コーシーの積分定理が得られる。

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[解] $f(z)= u(x,y)+iv(x,y)$ とおくと、 \[ \oint_{\partial D} f(z)dz = \oint_{\partial D} (udx-vdy) + i\oint_{\partial D} (udy+vdx) \] であり、ここでグリーンの定理を使うと \begin{eqnarray*} \oint_{\partial D} (udx-vdy) &=& \int_D \left( -\frac{\partial u}{\partial y}-\frac{\partial v}{\partial x} \right) dxdy \\ i\oint_{\partial D} (vdx+udy) &=& \int_D \left( -\frac{\partial v}{\partial y}+\frac{\partial u}{\partial x} \right) dxdy\\ \end{eqnarray*} を得る。合わせて \begin{eqnarray*} \oint_{\partial D} f(z)dz &=& \int_D \left( -\frac{\partial u}{\partial y}-\frac{\partial v}{\partial x} -i\frac{\partial v}{\partial y}+i\frac{\partial u}{\partial x} \right) dxdy \\ &=& \int_D i \left( \frac{\partial}{\partial x}+i\frac{\partial}{\partial y}\right)(u+iv) dxdy \\ &=& 2i \int_D \frac{\partial f}{\partial \bar{z}} dxdy \end{eqnarray*}
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■解説■

コーシーの積分定理は数学の中でも特に美しい定理の一つです。複素関数の周回積分を考えたときに、その関数が当該領域で正則であれば、常にその積分値がゼロになるということですから。逆に言うと、正則関数とはそれだけ特殊な関数ということでもあります。

今回の問題は、正則でない複素関数について周回積分を行った場合に、その正則でない部分がどのようにして積分値に寄与するかを表しています。

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■問題■

[問] ある郵便局に ATM(現金自動預払機)が一台置いてあるとする。ATM には一時間当たり平均 $a$ 人の人が訪れる。また一人の人が ATM を操作するのに一時間あたり平均 $b$ 時間かかるものとする。さて、このときに ATM の前にできる行列の長さ(人数)の均衡状態での期待値を求めよ。ただし $ab<1$ とする。

ヒント:この手の問題では通常次の確率分布が仮定されますが、ここでもそれを使ってください。
  単位時間当たりに ATM に訪れる人数→ポアソン分布
  一人の人が ATM を操作する時間→指数分布

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■後記■

9月に入り朝晩はめっきり涼しくなりました。日中はまだ汗ばみますが夜は布団なしだと寒いですね。

秋といえば、読書の秋、食欲の秋などいろいろありますが、今まで暑くて何もする気が起きなかった分、これからその時間を取り戻すべくいろんなことに挑戦したいですね。

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